EPSM(馬多糖貯蔵性ミオパチー)とは?症状から食事・運動管理まで徹底解説

EPSM(馬多糖貯蔵性ミオパチー)とは、筋肉が正常にエネルギーを作れなくなる遺伝性の代謝疾患で、がっしりした体型の馬種に多く見られます。結論から言うと、この病気は「治す」よりも「管理して付き合っていく」ことが重要です。私たちが愛馬のEPSMと向き合う上で最も大切なのは、従来の飼育常識を一度リセットし、「高脂肪・低糖質」の食事と「毎日の適度な運動」という新しいライフスタイルを導入すること。この記事では、あなたが今日から実践できる具体的な管理方法を、症状の見分け方から食事の献立、運動のコツまで、詳しく解説していきます。特にアメリカンクォーターホースやペイントホースを飼育されている方は、ぜひ参考にしてください。

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Equine Polysaccharide Storage Myopathy

この病気、どんな馬がかかりやすいの?

EPSMは、アメリカンクォーターホースやペイントホース、ウォームブラッドなど、がっしりした体型の馬種に多く見られる病気です。交雑種もかかりやすい傾向があります。一般的に、体重が重い馬ほど症状は重くなり、また、牡馬よりも牝馬に発症しやすいというデータもあります。

EPSMは、日本語で「馬多糖貯蔵性ミオパチー」と言います。この病気の本質は、筋肉が正しくエネルギーを作れなくなることです。健康な馬の筋肉は、グリコーゲンという形で糖を蓄え、運動する時に燃料として使います。しかし、EPSMの馬はこのシステムに問題があり、グリコーゲンの代わりに異常な多糖体が筋肉細胞の中に溜まってしまうんです。まるで、ガソリンタンクにゴミが詰まって、エンジンがかからない車のよう。遺伝が大きな要因と考えられていますが、必ずしも親から子へ確実に遺伝するわけではなく、発症のメカニズムは複雑です。あなたが重種馬を飼っているなら、この病気の可能性を頭の片隅に置いておくといいでしょう。

見逃さないで!EPSMのサインはこれだ

EPSMの馬は、運動を嫌がり、よく横になり、動くのを渋ります。

一番分かりやすい症状は、運動開始直後に現れる筋肉の痛みや発作です。お尻や前脚の筋肉、後脚に痛みが出て、コントロールできない痙攣や発作を起こすことがあります。「さあ、今日もトレーニングだ!」と張り切って始めたら、突然脚がつって動けなくなった——そんなイメージです。他にも、歩き方がおかしい、バランスを崩しやすい、脚がこわばって見える、後脚の関節がうまく曲がらない、といった症状があります。進行すると、深刻な体重減少や筋肉の萎縮、特に腰や太ももの部分が痩せ細ってくるのも特徴です。獣医師は血液検査で、クレアチニンキナーゼ(CK)や乳酸脱水素酵素(LDH)といった筋肉由来の酵素値が高くないかもチェックします。これらのサインに気づいたら、早めの対応が肝心ですよ。

EPSM(馬多糖貯蔵性ミオパチー)とは?症状から食事・運動管理まで徹底解説 Photos provided by pixabay

どうやって診断する?治療法はある?

EPSMを確実に診断するには、筋肉生検が必要です。獣医師が患部の小さな筋肉組織を採取して顕微鏡で調べ、異常な多糖体が蓄積していないか確認します。

残念ながら、EPSMを根本から治す「特効薬」は今のところありません。じゃあ、諦めるしかないの?そんなことは絶対にありません!病気ともうまく付き合っていくための管理法が確立されています。その中心となるのが、食事管理と運動管理の見直しです。治療というより、ライフスタイルの変更と言った方が近いかもしれません。この病気の馬にとって、従来の馬の食事常識が、逆に症状を悪化させているケースが多いんです。次のセクションで、その具体的な方法を詳しく見ていきましょう。

EPSMとの向き合い方:食事と運動の革命

まずは食事から変えよう!NG食材とOK食材

EPSM管理の第一歩は、糖質の多い濃厚飼料を徹底的に排除することから始まります。

具体的に言うと、砂糖大根(ビートパルプ)、糖蜜(モラセス)、穀物(オーツ麦、トウモロコシ、大麦など)はできるだけ与えないようにします。これらは消化の早い炭水化物(でんぷんや糖)を多く含み、EPSMの馬の苦手な血糖値の急上昇を引き起こし、症状を悪化させる可能性があります。では、何を食べさせればいいのでしょう?答えは、高品質の粗飼料です。あなたの獣医師や馬の栄養士に相談して、その馬に合った牧草や干し草を中心とした食事プランを立てましょう。良質なチモシー干し草やアルファルファハイ(ただしカルシウム含有量に注意)が選択肢になります。脂質をエネルギー源としてうまく利用できるよう、ココナッツオイルや亜麻仁油などの健康的な油脂を少量追加する食事法(高脂肪・低糖質食)が有効だという報告もあります。いきなり全てを変えるのは大変なので、まずは穀物を半分減らすことから始めてみてはどうでしょうか。

運動は「ゆっくり、毎日、継続が命」

EPSMの馬には、いきなり激しい運動は禁物です。まずはゆっくり歩くことから始めましょう。

「かわいそうだから、厩舎でゆっくり休ませてあげよう」と思うかもしれません。実はそれが落とし穴です。EPSMの馬にとって、動かないことこそが最大の敵なんです。筋肉を使わないと、かえって循環が悪くなり、こわばりや痛みが増してしまいます。理想は、1日1回、最終的に30分程度の本格的な運動(軽い駈歩を含む)を目標に、ウォーミングアップを十分にとってから始めること。最初の数週間は、牽引運動で10分歩くだけでも立派な運動です。そして、運動と同じくらい重要なのが放牧時間の確保。できるだけ長い時間、牧草地で自由に歩き回らせてあげてください。自然に歩くことが、最良のリハビリテーションになります。天候が悪い日も、屋内運動場などで少しでも歩かせる工夫をしましょう。あなたが毎日コツコツ付き合うことが、愛馬のQOL(生活の質)を劇的に向上させる鍵です。

馬の筋骨格系を悩ます他の代表的な病気

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どうやって診断する?治療法はある?

蹄葉炎は、蹄の内部で起きる恐ろしい炎症です。激しい痛みを伴い、重症化すると蹄が変形したり、蹄骨が沈下してしまうことも。

これはもう、私たちがひどい靴擦れで、靴の中が血だらけになっているようなもの、いや、それ以上の痛みだと想像してください。原因は多岐に渡りますが、EPSMと共通する点もあります。それは食事からの影響が非常に大きいということ。特に、牧草の春の新芽や秋の再生草には糖分(可溶性炭水化物)が多く含まれており、これを過剰に摂取すると、消化管内でバランスが崩れ、内毒素が血流に乗り、蹄の微小循環を阻害して炎症を引き起こすと考えられています。肥満やクッシング病(副腎皮質機能亢進症)も大きなリスク因子です。予防のためには、EPSMと同様に糖質摂取を管理し、定期的な蹄の手入れと体重管理が欠かせません。愛馬が前脚を交互に上げて休もうとする「モデル姿勢」を取っていたら、それは蹄葉炎の痛みのサインかもしれません。すぐに獣医師に連絡を!

変形性関節症:老若男女ならぬ老若牡牝、どの馬にも

変形性関節症は、関節の軟骨がすり減り、痛みと機能障害を引き起こす、馬界で最も一般的な関節疾患です。

競走馬の膝や飛節(かかとに相当する関節)に多いイメージがありますが、実はどんな馬、どんな年齢でも発症する可能性があります。関節は、骨と骨がぶつからないようにするためのクッション(軟骨)と、潤滑油(関節液)で守られています。しかし、加齢、過度の負荷、過去の怪我、あるいは単に体の構造上の問題で、このクッションがだんだん磨り減っていくんです。初期段階では、運動開始時のこわばりだけで、動いているうちにましになることも多いため、見逃されがち。でも、進行すると常時痛みを伴い、歩様が明らかにおかしくなります。治療は、鎮痛消炎剤の投与、関節内注射(ヒアルロン酸やステロイド)、サプリメント(グルコサミン、コンドロイチンなど)の使用が中心です。でも、何より大切なのは適正体重の維持と、適度な運動による関節周囲の筋肉強化。あなたが愛馬と長く一緒に乗るためには、関節の健康にも目を向ける必要がありますね。

病気の予防と早期発見に役立つ習慣

毎日チェック!「ボディコンディションスコア」のススメ

馬の健康管理で、体重計がなくてもできる最も簡単で有効な方法が、ボディコンディションスコア(BCS)の評価です。

これは、見た目と触った感じで、馬の脂肪の付き具合を1(極度の痩せ)から9(極度の肥満)の段階で評価する方法です。理想は5前後。あなたが毎日ブラッシングをする時に、肋骨にそっと手を当ててみてください。軽く触れて感じられる程度が理想です。全く感じられなければ太り気味、目で見て骨の形がわかれば痩せ気味です。また、首の付け根(頸陵)や尾の付け根に脂肪の塊(クリープ)ができていないかもチェックポイント。このBCSを定期的に(例えば月に1回)記録しておくだけで、ゆっくりとした体重の変化に気づけるようになります。EPSMによる筋肉の萎縮や、蹄葉炎のリスクとなる肥満の早期発見に絶大な効果を発揮します。記録はスマホのメモか、厩舎のカレンダーに書くだけでもOK。簡単な習慣が、大きな病気を防ぐ第一歩なんです。

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どうやって診断する?治療法はある?

私たちの目では気づけない変化を、獣医師や蹄鉄師のプロの目は見逃しません。

少なくとも年1回、できれば年2回は、かかりつけの獣医師に総合的な健康診断をしてもらいましょう。歯科検査(歯浮きの問題は栄養摂取に直結します!)、予防接種、寄生虫検査と合わせて、身体検査をしてもらうのが理想的です。また、蹄鉄師(ファラー)の存在は馬の筋骨格系の健康にとって不可欠です。6〜8週間ごとの定期的な削蹄・装蹄は、単に蹄の形を整えるだけでなく、脚のバランスを保ち、関節への負担を軽減します。変形性関節症の進行を遅らせるためにも、この定期メンテナンスは必須です。「うちの子は特に問題ないから」と油断する前に、プロによるチェックを習慣化してみませんか?それは、愛馬との楽しい時間を、1年でも、1ヶ月でも長くするための、最高の投資になるはずです。

データで見る馬の主な筋骨格疾患 比較表

主要な病気の特徴を一目で比較できるように表にまとめました。あなたの愛馬の管理の参考にしてください。

病名主な影響部位主な原因・リスク因子管理・治療の中心好発馬種・傾向
EPSM(多糖貯蔵性ミオパチー)全身の骨格筋遺伝的要因、高糖質食高脂肪・低糖質食、定期的な軽運動アメリカンクォーターなど重種、牝馬にやや多い
蹄葉炎蹄(特に前蹄)牧草の過食(高糖質)、肥満、クッシング病急性期の鎮痛・消炎、食事管理(糖質制限)、蹄のケアポニー種、肥満馬、代謝疾患のある馬
変形性関節症膝、飛節、球節などの関節加齢、過去の外傷、過度の負荷、体構造疼痛管理(薬物、注射)、サプリメント、運動管理全ての馬種、競走馬やスポーツホース、高齢馬

(注:表内の情報は、一般的な獣医学教科書および臨床報告に基づく概括的な内容です。個々の症例については必ず獣医師の診断に従ってください。)

飼い主としてできること、考えること

情報に振り回されない、でも学び続ける姿勢

ネットや口コミには、時に過激な情報や誤解が溢れています。まずは信頼できる情報源を確保しましょう。

かかりつけの獣医師は最高の相談相手です。また、大学の獣医学部が公開している資料や、信頼性の高い馬の専門雑誌・書籍も参考になります。EPSMの食事療法について「絶対に穀物を与えるな」という極端な意見もあれば、「少しなら大丈夫」という意見もあります。私は、「自分の馬にとっての最善」は、一般論ではなく、その馬の状態を一番よく知るあなたと獣医師が一緒に決めるものだと考えています。情報を集め、学ぶことは大切ですが、それによってかえって不安になり、愛馬との関係性までギクシャクしてしまっては本末転倒です。知識は、あなたを不安にするためのものではなく、愛馬を守り、より良い判断をするための武器です。怖がらずに、でも冷静に、学びを続けてください。

病気は「敵」ではなく「付き合う相手」と捉える

EPSMにせよ他の病気にせよ、診断が下ると私たちは大きなショックを受けます。「なぜうちの子が」と。

でも、少し視点を変えてみませんか?病気は、確かに悲しい出来事です。しかし同時に、それはあなたが愛馬の健康と真剣に向き合うきっかけにもなります。今まで気にしていなかった食事の内容、運動の仕方、体重の変化——それらに目を向けることで、たとえ健康な馬であってもより良いケアができるようになります。病気の管理は確かに手間がかかります。特別な食事の準備、毎日の運動の付き添い、それは大変なことです。でも、その一つ一つの行為が、「あなたのためなら」という愛情の形なんです。私たちは完璧な飼い主である必要はありません。ただ、目の前のパートナーと誠実に向き合い、ベストを尽くそうと努力する飼い主であり続ければいい。それだけで、愛馬はきっと応えてくれるはずです。

馬の「気持ち」を読み解く:行動から見える健康のヒント

あの仕草、実はSOSかも?

馬が地面を嗅いだり、口をパクパクさせたりする行動は、単なる癖ではありません。ストレスや不快感の表れであることが多いんです。特にEPSMの痛みを抱える馬は、分かりやすい症状が出る前に、こうした微妙な行動の変化を見せ始めます。

私たちはつい、明らかな跛行や発作にばかり目を奪われがちです。でも、馬は言葉を話せない代わりに、全身でサインを送っています。例えば、いつもは楽しそうにしていた放牧場への出入りを、急に躊躇するようになったら要注意。筋肉にこわばりや違和感を覚えているのかもしれません。また、ブラッシングを嫌がる部位が急に増えた、厩舎でじっと下を向いている時間が長くなった——こうした変化は、あなたへの大切なメッセージです。「あれ、なんだか今日は元気ないな」と感じたら、それは健康チェックの絶好のタイミング。私たちが彼らの「言葉」を学ぶことで、病気の早期発見の可能性はぐんと広がります。あなたの観察眼が、最高の診断ツールになるんですよ。

「仲間」との関係性が教えてくれること

馬は群れの動物です。だから、他の馬との関わり方の変化も、健康状態を映し出す鏡になります。

群れの中で順位が低くなった、あるいは逆に攻撃的になった。こうした社会行動の急変は、体のどこかに痛みを抱えている可能性を示唆しています。痛みがあると、馬は自分を守るために、周囲に対して過敏になったり、無気力になったりするからです。特にEPSMのような慢性の筋骨格系の問題は、「動くのが面倒」「群れについていくのがしんどい」という気持ちに直結し、結果的に社会的孤立を招くことがあります。あなたが多頭飼いをしているなら、ぜひ彼らの日常的なやりとりを観察してみてください。いつも一緒にいる相棒から離れて一人でいる時間が増えていないか?餌の時間に以前のように積極的に食い込めているか?これらの観察は、血液検査や触診では分からない、その馬の「生活の質」を教えてくれます。健康とは、単に病気がない状態ではなく、幸せに暮らせる状態なのだと、馬たちが教えてくれている気がします。

最新研究が明かす新事実:食事と遺伝子の深い関係

「脂質」は悪者じゃない!エネルギー革命の最前線

従来の馬の栄養学では、炭水化物が主なエネルギー源と考えられてきました。しかし、EPSMの研究が進むにつれ、脂質の重要性が見直されています。特に中鎖脂肪酸(MCT)を含むココナッツオイルは、筋肉細胞が直接利用できる効率的な燃料として注目を集めています。

「脂質を多く与えると太るのでは?」と心配になるかもしれません。確かに、カロリー過多になれば太ります。しかし、ここで言う高脂肪食は、穀物などの高糖質飼料を大幅に減らし、その分を良質な油脂で補うという置き換えの発想がポイントです。ある研究では、EPSMと診断された馬に高脂肪・低糖質食を継続したところ、約60-70%の症例で運動不耐性の改善が見られたと報告されています(出典:Equine Veterinary Journalのレビュー記事による概括)。筋肉の「エネルギー工場」であるミトコンドリアが、糖ではなく脂質を燃料としてうまく使えるようになることで、パフォーマンスが向上するのです。あなたが愛馬の食事にオイルを追加するなら、必ず獣医師と相談しながら、少量からゆっくりと導入してください。急激な変更は、かえって消化器の不調を招きます。

遺伝子検査は私たちの味方になるか?

「この子は将来EPSMになるの?」という不安に、科学はどこまで答えられるのでしょうか。現在、いくつかの馬種におけるEPSM関連の遺伝子マーカーの研究が進められています。

しかし、現時点では「この遺子子を持っているから100%発症する」といった単純なものではありません。複数の遺伝子と環境要因(食事や運動)が複雑に絡み合って発症に至ると考えられています。では、遺伝子検査に意味はないのでしょうか?そんなことはありません。検査によってある程度のリスクを把握できれば、私たちはより早期から予防的な管理を始めることができます。例えば、リスクが高いと分かった馬には、若いうちから糖質を控えめにした食事を心がけるなどです。検査結果は、愛馬の未来を決める「運命の宣告」ではなく、より良いケアをするための「有益な情報の一つ」と捉えるのが賢明でしょう。あなたがブリーダーなら、繁殖計画を立てる上での参考資料としての価値もあるかもしれませんね。

馬の健康を支える「第三の柱」:メンタルケアの重要性

退屈は万病の元?「環境エンリッチメント」のススメ

一日の大半を厩舎で過ごす馬にとって、「退屈」は深刻なストレス源になります。ストレスは免疫力を低下させ、あらゆる病気への抵抗力を弱めることが知られています。

特にEPSMや関節症で運動量が制限されている馬は、どうしても生活に刺激が少なくなりがちです。そこで試してほしいのが、環境エンリッチメント。難しく聞こえますが、要は彼らの生活にちょっとした楽しみや選択肢を増やしてあげることです。具体的には、干し草をネットに入れて食べる時間を長くする、安全な木製のおもちゃを吊るす、ミントやカモミールなどの香草を時々与えてみる——そんな小さな工夫で十分です。ある牧場では、退屈しのぎに厩舎の壁を齧る癖があった馬に、専用の塩レンガや齧り木を与えたところ、問題行動が減り、全体的な落ち着きが増したそうです。あなたの愛馬が今、何に退屈しているのか、想像力を働かせてみてください。その解消法が、身体だけでなく心の健康も守ることにつながるのです。

飼い主の不安は、馬に伝わる?

私たちが心配や焦りを感じている時、実は馬はそれを敏感に察知しています。彼らは優れた感情の読み手なのです。

EPSMの管理で食事や運動に神経質になりすぎて、あなた自身がピリピリしていませんか?馬はリードを握る手の緊張や、声のトーン、体の硬さから、私たちの感情状態を読み取ります。そして、その緊張が彼らにも伝染し、余計なストレスをかけてしまう可能性だってあるんです。難しい病気と向き合う時こそ、「完璧にやらねば」というプレッシャーを一度脇に置いてみましょう。たまには管理を少し緩めて、ただただ首を抱きしめてあげる日があってもいい。その穏やかで安心できる時間が、馬にとっては何よりの「治療」になることもあります。あなたの心の余裕が、愛馬の回復への一番の近道かもしれない——そう考えてみると、少し肩の力が抜けませんか?

馬の健康管理コスト比較:予防と治療、どちらが「お得」?

病気の管理には、どうしても費用がかかります。しかし、初期の予防策に投資するのと、発症後の治療に費やすのとでは、長期的に見てコストにも大きな差が出ます。以下の表は、代表的なケアにかかる年間の概算費用を比較したものです(あくまで目安であり、地域やサービスによって大きく変動します)。

ケアの種類主な内容想定年間費用(円)得られるメリット
予防的ケア(基本)年1回健康診断・歯科、定期削蹄(6-8週毎)、予防接種、駆虫約150,000 ~ 250,000大病のリスク低減、早期発見による治療費軽減、QOL向上
EPSM 食事管理(追加)高品質粗飼料、ココナッツオイル等のサプリメント約50,000 ~ 100,000 (従来食との差額)症状抑制、運動能力維持、合併症予防
蹄葉炎 急性期治療緊急の獣医師往診、鎮痛剤、レントゲン、特別な蹄ケア(パッド等)初回で200,000円以上※継続費別生命の危機回避、激痛の緩和
変形性関節症 進行期管理定期的な関節内注射、経口鎮痛剤、リハビリ約100,000 ~ 500,000以上(重症度による)疼痛コントロール、運動機能の維持延命

(注:表内の費用は、一般的な動物病院・ファラーの料金相場を参考にした概算です。実際の費用は症状や治療内容により大きく異なります。)

この表を見て、あなたはどう思いますか?確かに予防にもお金はかかります。でも、一度発症してしまった病気の治療費や、それに伴う愛馬の苦痛、そしてあなたの心労を考えると、予防は最高の投資と言えるのではないでしょうか。特にEPSMのような慢性疾患は、管理を始めるタイミングが早ければ早いほど、その後の生活の質と経済的負担に良い影響を与えます。私たちが今できる小さな投資が、未来の大きな安心を買うのだと考えれば、ブラッシングの時間も、蹄チェックも、少し違った気持ちでできるはずです。

あなたの一歩が、馬業界を変える?

情報共有の輪を広げよう

あなたがEPSMやその他の病気について学び、実践した経験は、他の飼い主さんにとっての貴重な財産になります。SNSや地域の馬主会などで、失敗談も含めて気軽に情報を共有してみませんか?

「こんな食事で調子が良くなった」「この運動法は逆効果だった」——そんな生の声は、教科書には載っていないリアルな知恵です。特に希少な病気の場合、情報が少なくて孤独を感じる飼い主さんは少なくありません。あなたの一言が、誰かを勇気づけ、より良い選択につながるかもしれません。もちろん、あくまで個人の経験であり、獣医学的アドバイスではないことを前置きするのはマナーです。でも、専門家と飼い主が協力して知識を積み上げていくことで、全体の馬の福祉のレベルは確実に上がっていきます。あなたの体験が、次の誰かの光になる。そう思うと、学びと実践にもっとやりがいを感じませんか?

馬の選択にも、健康の視点を

最後に、少し大きな視点で考えてみましょう。もしあなたが将来、新しい馬を迎える機会があれば、その選択基準に「かかりやすい病気」という視点を加えてみてはどうでしょうか。

例えば、がっしりした体型の馬種がどうしても好きなら、EPSMのリスクを理解した上で迎え入れ、最初から予防的な管理を始める覚悟を持つ。あるいは、ポニー種を飼うなら、春の牧草管理と体重コントロールを最重要課題として認識する。これは、特定の馬種を否定することではなく、「この子と幸せに長く暮らすために、私に何ができるか」を事前に考えるという、責任ある飼い主の態度です。ブリーダーやセラーに対して、親馬の健康状態やかかりやすい病気について質問することも、当然の権利です。私たち飼い主の意識が高まることで、結果的に丈夫で健康な馬を作出するという業界全体の流れを作ることだってできるのです。あなたの一頭への愛情が、やがてより大きな変化の種になる——そう信じて、今日も愛馬の元へ向かいましょう。

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FAQs

Q: EPSMにかかりやすい馬の特徴は?

A: EPSMは特定の馬種に強く関連しており、アメリカンクォーターホース、ペイントホース、ウォームブラッドなどの、がっしりとした体型の「重種」やその交雑種に多く発症します。遺伝的要因が大きいと考えられていますが、必ずしも親から子へ確実に遺伝するわけではなく、発症メカニズムは複雑です。一般的な傾向として、体重が重い馬ほど症状が重くなりやすく、また統計的には牡馬よりも牝馬にやや多く見られるというデータもあります。あなたがこれらの馬種を飼育している場合、たとえ今は症状がなくても、この病気の可能性について知識を持っておくことが、いざという時の早期発見・早期管理につながります。

Q: EPSMの最も分かりやすい初期症状は何ですか?

A: 一番特徴的なのは、運動を開始した直後に現れる筋肉の痛みや硬直、時には発作的な痙攣です。「さあ、運動しよう」と動き始めて数分後、突然お尻や後脚の筋肉がつったようになり、動けなくなることがあります。その他、明らかな理由なく運動を嫌がる、よく横たわる、歩き方(歩様)がぎこちない、バランスを崩しやすい、後脚の関節がスムーズに曲がらないなどの症状もサインです。進行すると、腰や太ももの筋肉が萎縮して痩せ細ってくる「筋肉のやせ」が見られるようになります。これらの変化はゆっくりと進むため、毎日観察しているあなただからこそ気付ける、微妙な違いを見逃さないことが大切です。

Q: EPSMの診断はどのように行うのですか?

A: EPSMを確定診断するためのゴールドスタンダードは筋肉生検です。これは、獣医師が局所麻酔をかけた上で、通常は首やお尻の筋肉からごく少量の組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。EPSMの馬では、筋肉細胞内に正常なグリコーゲンではなく、異常な「多糖体」という物質が蓄積しているのが確認されます。血液検査も補助的に用いられ、筋肉の損傷を示す酵素(CK、AST、LDHなど)の値が上昇していないか調べます。ただし、血液検査の数値だけでは確定できず、あくまで筋肉生検が決定打となります。気になる症状がある場合は、かかりつけの獣医師に相談し、専門的な検査を検討しましょう。

Q: EPSMの馬におすすめの食事管理は?

A: 管理の要は「高脂肪・低糖質」の食事への切り替えです。まず、従来の濃厚飼料で与えられがちな穀物(オーツ、トウモロコシなど)、糖蜜、砂糖大根(ビートパルプ)は可能な限り排除します。代わりに、良質なチモシーやオーチャードグラスなどの牧草・干し草を食事の中心に据えましょう。さらに、エネルギー源として消化の良い脂肪を追加する「高脂肪食」が有効です。具体的には、ココナッツオイルや亜麻仁油を1日カップ1杯程度から始めてみる方法があります。この食事変更は、血糖値の急激な変動を抑え、筋肉が苦手とする糖質の代謝負担を減らすことを目的としています。いきなり全てを変えるのは難しいので、まずは穀物の量を半分に減らすことから始めてみてください。

Q: EPSMの馬の運動で気をつけるべき点は?

A: 最大のポイントは「毎日、ゆっくり、継続的に動かす」ことです。「痛がっているから休ませよう」は逆効果で、筋肉を使わないことでかえって循環が悪化し、こわばりが進みます。理想は、1日1回、ウォーミングアップを十分に行った後で、最終的に30分程度の軽い運動(歩行と軽い駈歩)を目標にすること。最初は牽引運動で10分歩くだけでも構いません。また、運動と同じくらい重要なのが放牧時間の確保です。できるだけ長い時間、安全な牧草地で自由に歩き回らせ、自然な運動を促しましょう。天候が悪い日は屋内運動場を利用するなど、「全く動かない日」を作らないことが、筋肉の状態を維持し、QOL(生活の質)を高める秘訣です。

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